【夜の巷】博識なのに情があるマツコは素人いじりの天才だ

テレビ朝日系列で放送されている深夜番組「夜の巷を徘徊する」は、マツコ・デラックスが夜の街に突然出没し、一般の人々と触れ合いながら、ほぼノープランで歩き回るロケ番組である。

正式な出演者はマツコ一人であるが、特定の男性スタッフが案内役となってマツコを誘導したり、話し相手になっている場面も多い。そのため、画面にはほとんど映らないが、この番組スタッフが実質的なアシスタント役と言える。

過去には、木村拓哉を特別ゲストに迎えて二人でロケをする回もあったが、接待しすぎないマツコの自然な対応がとても良かった。他にも福山雅治や大泉洋を迎えた回もあり、それぞれの飾らない素の魅力を引き出していたのが印象的だった。


この番組が人気となっている理由を考えてみると、様々なロケ番組の要素が散りばめられているからだと思えてくる。

例えば、博識なマツコは都内近郊の街について、地形や名所、住民の特徴などについて知識が豊富で、番組の中でもさりげなく披露しているが、これはマツコ版「アド街ック天国」とも言える。

さらに、街をぶらぶらしながら、気まぐれにお店に立ち寄るスタイルは、「モヤモヤさまぁ~ず」っぽさを醸し出している。

そして、街中で出会う素人を上手にいじったり、時には人生相談まで請け負ってしまうマツコを見ていると、これは「鶴瓶の家族に乾杯」を彷彿させるものがある。

表題では「素人いじりの天才」と書いたが、素人だけでなく芸能人やスポーツ選手、各界の著名人や学者まで、ありとあらゆる人と上手く対応しているように思う。

幅広い知識を有しているだけでなく、勘の鋭さも持っているので、会話をしながら得たヒントを元に答えを導き出したり、的確な内容を質問することができている。この能力がテレビ番組の制作においてはとても重宝される。

知識が乏しかったり勘が鈍いと、質問の数が増えすぎてしまい、ゲストや出演者のペースも乱れ、士気が下がる恐れがある。マツコはその逆であるから、ゲストや出演者も気分よく仕事ができるし、無駄の少ない収録ができれば、制作スタッフも編集がしやすいだろう。

また、「夜の巷」のようなロケ番組は、思い通りに撮れ高を満たせないこともあるはずだ。そんな時は、カメラに向かって延々と語るマツコの知識や見解が使えるのだから、それは強みだと言える。

忙しいマツコであるからこれは難しいかも知れないが、「夜の巷」のロケ地を東京近郊だけではなく、地方都市にも範囲を広げていくのも面白い試みだと思う。街中だけでなく観光地も巡れば、旅番組的な要素も加味され、視聴者層も広がるのではないだろうか。


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