「かりそめ天国」でのマツコの博識ぶりと鋭い視点に感服

ご存知の通り、「マツコ&有吉かりそめ天国」では、視聴者から疑問や不満などのメールに、マツコと有吉が気の利いた返しをするというのが、番組の基本スタイルである。

当然ながら、メールの内容に対して一般的な回答は求められておらず、マツコや有吉による独自の見解が必要になってくる。

かと言って、一般的な考え方から大きくかけ離れた突拍子もないコメントが聞きたいわけではない。視聴者に対してある程度は同調しつつも、時には「なるほど!」と思わせるような発言を交えるなど、絶妙なさじ加減が必要なのである。


例えば、これは前身番組である「マツコ&有吉の怒り新党」でのコメントだったと思うが、有吉が「友達の母親が握ったおにぎりを食べることができない」旨の発言をした際、マツコは有吉に対し「究極のマザコンなのではないか」と言い切っている。

この発言を聞き、私は自分の視野の狭さを痛感させられた。普通の感覚では、この結論には達しないだろう。大概の人であれば、潔癖症云々の切り口で討論した後、「気持ちの持ちようじゃない?」程度で話を締めてしまうのではないだろうか。

実は、「究極のマザコン」という結論に持っていくまでに、マツコは有吉に対し、「おにぎり屋」や「寿司屋」のようなプロが握るのは問題なく食べられるということを確認したり、「友達のお父さんの手料理」についても平気で食べることができるか等を質問している。

なので、思いつきの発言で結論づけたのではなく、事前の推理があっての結論づけであったことがわかるし、視聴者もその過程を楽しめているのだ。

最終的には、有吉から「母親以外の同年代の女性が握るおにぎりや手料理が苦手」であるという発言を引き出しているので見事といえる。

このような鋭い視点で視聴者の心を掴んでいるマツコであるが、この番組ではさりげなく博識さを披露することもある。

それは、飛行機や新幹線などの座席について、通路側と窓側のどちらがいいかという話題になった時だ。羽田空港へ着陸する旅客機がどのようなルートを通るかを詳しく知っていたり、大阪から神戸付近について上空からの絶景ポイントを紹介していた。

これは、知識をひけらかすというような嫌味さがないし、視聴者としてもお役立ち情報としてスッと頭に入ってくる。誰でもできそうな発言なので、気にも留めない人が多いと思うが、実はこのあたりの発言こそが、マツコが重用されている要因の一つであろう。

多くの視聴者が求めているのは、とてつもなく博識な人や、なんでも言い当てたり、模範的な回答をする人ではない。それをマツコは当然ながら理解している。

だからこそ、マツコ自身に膨大な知識や高い見識があったとしても、「このあたりで発言を留めておこう」とか、「この場合は、鋭い発言はやめておこう」などの判断を適宜行っているはずである。

このような賢さを備えたテレビタレントが今後増えてこない限り、引き続きマツコ・デラックスの隆盛は続くのだろう。


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